3月16日(日)横浜市鶴見区北部見学会レポート

 今回の見学会は雨にも関わらず参加者十一名、ほとんどが神奈川県在住会員だった。たいへん面白く感じたのは、皆がそれぞれの知識・見解(小林光考氏・桑久保紀代子氏他)・調査記録(門田春雄氏)を持ちより、或いは高齢者の為に自動車を出したり、そのためにわざわざ下見をされたり(伊東英明氏)、自然発生的に協力しあった見学会で、楽しく石仏巡りをした。

 大体の見学地点は桑久保氏が下見し、パンフレットも作成頂いたが、案内係という体裁は敢えて採らなかった。地元の小林光考氏(明治大学講師)が、お住まいの末吉近辺を、熟知された知識でご案内頂き、ご先祖ゆかりの石仏を解説頂いたり、門田春雄氏がその都度調査データーと見解を説明した。

 桑久保紀代子氏は、親しくされている江ヶ崎地区の方々との間を取り持って頂いた。そのお蔭様で、飯嶋吉六狛犬奉納者の子孫鴨志田潔氏など、代々世話役をしている方々から、詳細に村の歴史をお話を伺うことができた。

 鴨志田潔氏からは、二百年間余り、数々の天災・飢饉・洪水・地震、或いは行政上の所属区画の変更などの歴史、その中で代々世話役の方々が智慧を先祖から続く教えを活用して共同体を守ってきたことを、説得力ある言葉で語って頂いた。「平生はどうということはないが、いざ危機となったと時、どう対処できるかが大切」という言葉は、歴史の中に生きる人間の本質的な有様と課題を示している。その背景には、代々農家として、共同体を守り育てたこの地の人々が担い続けた無数の尊い働きがあったことを想った。鴨志田氏は今日でも、年末に黙々と自宅で搗いた餅を地区の人に配っている。

 このような地元の方々と、参加者の自発的な協力で、たいへん円満・順調かつ、学びとしても深く近年稀に見る”深度見学・深度考察”となった会であった。今後の見学会のあり方を考えるにじつに示唆に富んだ会であった。 (川野)

見学経路: 尻手駅(2.3km)→江ヶ崎人道橋→<昼食>江ヶ崎八幡神社(1.0km)→元吉橋→末吉神社(2.5km)→愛宕神社(1.3km)→宮ノ下バス停→東神奈川駅・鶴見駅