会長の随筆箱 7
7箱目 賽銭泥棒のことなど
子之神社は今泉(鎌倉市)にある小さな石祠で、昨年末三回目の賽銭泥棒があった。そのため、石祠を守るおかあさんは、泥棒に対して注意文を掲げていた。咎めだてするでもなく地域の大切な神様であることを切々と訴えていたのが切ない。次のような文章である。
「お願い 十二月一日夜中に鎖を切り賽銭箱共に盗まれました。三回目です。子(ね)の神様は腰から下、足の神様です。皆様信仰されています」
おかあさんは、石祠の土地の所有者である。かなり高齢である。おかあさんが草むしりをしているときに、いろいろ訊いてみた。 曰く、 15年前に石祠を守る近所のおばあさんが亡くなってから、自分が神様の世話をしている。 月に数百円しかない賽銭は、いつも町内会の子供会に寄付していた。賽銭箱ごと盗られた。お供えしている花代でもひと月千円以上かかっている。盗難防止に賽銭箱を鎖で繋いでいるものの、いつも断ち切られる。賽銭箱は返ってこない。年末の盗難では、一円玉だけ返しに来た。賽銭箱が盗まれてから、鶴岡八幡の方にお祓いをしてもらった。 足の神様は、下半身に霊験がある神様で、鎌倉市内にも多い。川崎市の方が子之神様の本を出している(この本がわからない。人に貸してしまったとのことである)。石祠を撤去しようとした人が二人ばかりいたが、神様が怒って死んでしまった。だから動かしてはいけない。云々。
