会長の随筆箱 5

5箱目 痩せた五劫思惟阿弥陀仏さま

「痩せた五劫思惟阿弥陀仏さま」(浮彫・希少な痩身型)(福井市清水杉谷町) (北陸石仏の会〈日本石仏協会北陸支部〉第68回例会にて尾田武雄事務局担当役員より解説) 東南アジアでは『ジャータカ』でのお釈迦さまの前生の姿を拝むが、日本では寡聞にして知らない。しかし日本で他のみほとけの前生のお姿を尊崇する事例に、五劫思惟阿弥陀仏さまがある。阿弥陀仏前生の法蔵菩薩さまである。 ところが、尾田武雄氏から説明を伺ったご像は、民衆の想像によるもので、お釈迦さま苦行のお姿をも彷彿させる痩身状の像容をとる希少なお姿であった。浄土真宗が盛んな北陸ならではとのこと。 長い長い五劫もの間の修行でも豊かな体躯を保ち、頭髪が伸びた尊像で知られる五劫思惟阿弥陀仏さまのご像とも、現代真宗の教義とも全く異なるもので、驚いた。 尾田武雄氏が解説されたように、宗教近代化で切り捨てられた民衆の祈りの形を見る思いで、仏教系大学の東洋大学(学祖井上圓了先生は浄土真宗大谷派の僧)で近代的学問を学んだ私も、反省させられた。