📔専門部会より📔「関西狛犬部会」設立記念見学会の報告 川野明正

日本石仏協会の専門部会は、1977年の創立後、中沢厚氏・中沢新一氏らの丸石道祖神の専門部会や、庚申塔の専門部会など、各地各所に専門部会があって、同好の士が集まって調査・研究が盛んであった。

本会もお蔭様で、全国的な規模での活動が可能な条件が整ってきた。そこで、長らく中断していた専門部会を立ち上げした。各地で会員のみなさんの積極的な活動を促進すべく、専門部会の活動を再生させたく取り組むことを目論む。

最初は学生会員が多い、関西で、関西狛犬専門部会を立ち上げることにした。

2025年2月20日、ご案内を会員の増田隆氏(会誌183号「播磨の石造狛犬探訪」寄稿)にお願いし、学生の中野智順氏(立命館大学)・目黒力輝氏(京都府大)と、山下立編集長・私で設立記念見学会を奈良市で行う。今後京都の大学院に進学予定の私の学生北原理咲子氏(明治大学)も参加の予定。庚申塔が好きな方もおり、いずれ狛犬のみならず、庚申塔などの石仏も随時観に行きたい。今後の活動について、みなさん活発に希望を語っておられ、近日中にまた第二回会合をし、関西石仏見学会も今後実施していきたい。

見学先は以下

1.法隆寺

2.薬園八幡神社

3.蓬莱神社

4.鎮宅霊符神社

5.南市恵毘須神社

1.法隆寺(奈良県斑鳩町)

私の希望で。法隆寺の金剛力士像(和銅四年 〈711年〉)を拝観したのは、後に十二世紀に阿吽と呼ばれる左像開口・右像閉口のかたちがつく立体像の初発といえるからである(長谷寺銅板法華説相図の左の金剛力士は後補)。御釈迦様の前生譚『ジャータカ』が好きな私は、玉虫厨子の「捨身飼虎図」も感激した(『金光明経』「捨身品」に記載あり)。

2.薬園八幡神社(大和郡山市材木町)(天明元年〈1781〉・細工人:松本傳兵衛)の他、宮司さまのご厚意で、木造狛犬一対拝見、遅くとも室町時代、山下立氏の見立てで恐らく南北朝期ではないかとの見解。小型木造狛犬が多くなる時期であることを考えても、そうではないか。鎌倉時代のものとは、やや柔らかくこなれた表現。今後の調査をお約束して、狛犬部会の課題がさっそく一つ出来た。

3.蓬莱神社(奈良市宝来町)
(元治元年〈1864〉三月吉日奉納 石工:権兵衛・慶應二年〈一八六六〉九月・石工:権兵衛、他)
南都手貝町(現在の転害門町)の幕末の石工権兵衛の狛犬、元治元年と慶應二年の二対をはじめ、陶造狛犬・石造神殿狛犬など多数。権兵衛の狛犬の途上の姿をみる。

4.鎮宅霊符神社(奈良市陰陽町)
(慶応三年〈1867〉四月奉納・石工:権兵衛)
笑顔の表情が印象的な権兵衛の狛犬のもっとも有名なもの。茄子が如き体躯だ。

5.南市恵毘須神社(奈良市南市町)
銘なく、権兵衛の作であるか否か、参加者にも議論があった。

6.日月神社(奈良市下三条町)(陶造狛犬)(寛政八年・一七九六・陶工:不詳)

                                                        川野明正記

薬園八幡神社石造狛犬の前で記念写真。宮司様撮影。向かって左から、増田隆氏・山下立氏・川野・目黒力輝氏・中野智順氏。